【天才】どうして僕等は「来生たかお」を忘れられないのか【姉弟】
有る風景に出会ったり、有る想いに触れたりしたとき、不意に来生たかおのメロディーを思い出すことがあります。下手をすると、自分では分別できない感情が、記憶の中の様々なメロディーや歌詞をなぞっていくような、「来生たかお的」気分になるときさえあります。それはきっと、思春期に通り過ぎていった感情と音楽が、心のどこかに一緒にしまわれているからなのでしょう。
そんな感覚、同時代を生きた方なら分かって頂けるでしょうか。
そこで今回は、平成生まれの小さなお友達も、昭和生まれだけど来生ワールドをよく知らない不届き者も、その深遠なる作品の世界を一緒におさらいしてみましょう。
アイドルと来生たかお
僕等の頃は、ヒットチャートはアイドルの曲でひしめき合っていました。この時代の作曲家というと、筒美京平を想い浮かべる人も多いでしょう。しかしながら、それに負けず劣らず、良曲を、しかも多数、世に送り出していたのが来生姉弟です。その中でも特に異彩を放っていたのは、やはり「中森明菜」でしょう。
来生姉弟は、当時人気を二分するアイドルだった彼女の、デビュー曲「スローモーション」、3曲目「セカンド・ラブ」、5曲目「トワイライト -夕暮れ便り-」を担当しています。これ、よく考えると凄いです。ちなみに彼女に提供した曲には、他にも「白い迷い(ラビリンス)」なんていう化け物級の名曲もあります。
その前となると、おそらく河合奈保子への提供も多いですが(「疑問符」も良い曲です)、セールス的にも認知度としても中森明菜の方がインパクトは大きかったと思います。
僕はこどもながら(こどもだから?)中森明菜の「不良」な部分より「大人」な部分に魅力を感じていたんですが、来生姉弟の楽曲は都会的で切なさを内包した曲が多く、まさに彼女の「大人」なイメージを構築した立役者といって良いでしょう。
次となると、斉藤由貴でしょうか。
この人は何となく玉置浩二作品のイメージが強いですが(「白い炎」「悲しみよこんにちは」など)、来生たかおの曲も多く歌っています。シングルとしては「ORACIÓN -祈り-」のみですが、アルバム提供曲が多く、伝説的名盤「AXIA」のラストナンバー「雨のロードショー」も個人的におすすめです。僕は「AXIA〜かなしいことり〜」よりもこっちの方が断然好きな雰囲気です。
その他にも、ヨーヨー繋がり(こら!)だと、
南野陽子
「楽園のDoor」
風間三姉妹「Remember」
と、立て続けにミスマガジンを良曲でサポートしていたりしますが、これはまさに氷山の一角。ここで全部紹介するとリンクが多すぎて大変な事になるので控えますが、先の薬師丸ひろ子に原田知世、西村知美もミポリンもノリピーも、聖子ちゃんだって、みんな来生たかおの曲を歌っています。さあ、実家に帰ったらレコードの歌詞カードを確認しましょう。あなたのお気に入りだったアイドル曲、もしかしたら来生作品かもしれませんよ。
そう、当時は皆、大好きなアイドルに来生姉妹のロマンティックな世界を投影して、恋を疑似体験していたのです。
アニメと来生たかお
来生たかおでアニメと言えば、高橋留美子原作「めぞん一刻」でしょう。エンディングテーマで流れていた「あした晴れるか」は、歌詞の内容と主人公の気持ちが微妙にリンクしてて、アニメの世界観にいっそう没入できました。いまでも理想は音無響子、なんて人、いるんじゃないでしょうか。え?六本木朱美さんの方なの?
次にゆかりのあるアニメと言えば、あだち充原作の「みゆき」です。確かに主題歌・エンディングはH2Oですが、挿入歌にはあの名曲「Goodby Day」等、なんと5曲も使われて使われているのです。僕が覚えているのは「Goodby Day」だけなんですけどね。ただ正直なところ、高校生に来生ワールドはどうもちぐはぐというか、ちょっと大人すぎる選曲に違和感を覚えました。
道南出身のモトブロガーさんから追加情報頂きました(7/16追記)。
フジテレビ「ハウス世界名作劇場」枠で放送された「私のあしながおじさん」。そのエンディング・テーマ「君の風」も来生姉弟による作品でした。確かに終わり方が来生節というか、アニメソングにしては凝った終わりかたしてます。
しかし良くご存じでしたねえ。来生ファンの底力を感じます。
CMと来生たかお
・ホンダ「Today」CM「はぐれそうな天使」
メロディーを聴いてCMの場面が浮かぶのは、ホンダ「Today」でしょう。イギリスの風景や今井美樹が被るハンチングが、来生たかおのイメージともマッチして、落ち着いた優しさのあるCMになっていたと思います。ちなみに岡村孝子バージョンもありますが、「はぐれそうな天使」は彼女への提供曲ではなく、来生たかおの曲を岡村孝子がカバーしたのだそうです。確かに調べてみると、リリース日は来生たかおの方が早いんですよね。
・JR東日本「びゅうJAPAN」CM「夢より遠くへ」
僕の中で、金沢のイメージは今でもコレです。湿度と微熱を帯びたこの雰囲気。それ位、インパクトがあるCMでした。たしか1990年あたりのものだったと思います。なんで北陸新幹線開業の時、どうしてこの感じにしなかったんだろう?不倫の匂いがするから?
当時、コレと同じバイクに乗っていたので、よく覚えているCMです。なんというか、オジサンの淡い恋心というか冒険心というか、そういうのを上手く表現できてるCMですよね。あれ、ひょっとするとこの俳優と今の僕って、同じ歳くらいじゃ・・・、止めておきましょう。
僕等の時代を切なく彩った、来生たかお
いかがでしょうか?40代の方にはどれも記憶に新しい(!?)ものばかりだったと思います。来生たかおの曲は、「浸れる」センチでメロディアスな良曲ばかり。最近の「若いって良いでしょ!」みたいな乗りの曲も元気が出て良いですが、あの頃の、早く大人になりたくて背伸びするような曲も、僕は好きですね。この大人の憂いと切ないメロディーで、もう一度、ヒットチャートを席巻してほしいものです。